先日、阪神タイガースが18年ぶりとなる6度目のセ・リーグ優勝を果たしました。関西方面では優勝セールが行われたり、街中にトラ柄が溢れたりと、大騒ぎになっているようです。

ネコ科であるトラがこのようにフューチャーされるのを、猫専門病院として指をくわえて見ていることはできません!…というわけで、この機会に「トラに関する豆知識」を、猫と比較しながら書いてみたいと思います。

トラも猫の仲間、ネコ科は40種

食肉目ネコ型亜目ネコ科に属する哺乳類は40種存在しており、その中にライオン、ヒョウ、チーターなどと一緒に今回の主役のトラやイエネコ(皆さんのおうちにいるネコのこと)も含まれます。基本的な形はみんな一緒。しなやかな体のつくりと長い尻尾、鋭い歯とかわいくて柔らかい肉球、ひげ…。パーツごとに見ると、ライオンもトラもイエネコとおんなじです。

ただ、体重は1kg程度のものから300kgを超えるものまで様々。今回の主役であるトラは、ネコ科では最大クラスに分類される、大型ネコです。

ネコ科に属する動物たちで最も特徴的なのは、ハンターとしての動きです。獲物に音を立てずに忍び寄り、素早く襲いかかります。この動作に特化した結果、大きな耳やしなやかな体などを手に入れたと考えられています。

イエネコとトラの違いは?

かわいいイエネコと恐ろしいトラ、その大きな違いは噛む力です。ご自宅の猫ちゃんに本気で噛まれたことのある方は手に穴が開いたと思うのですが、その力はニュートンという単位で表すと56N(ニュートン)だそうです。一方、トラはなんと…1,525N。さて、ヒトの手は噛まれたらどうなるのかしら…考えたくないですが、イエネコの噛む力の約300倍ということです。

ライオンは「ガオー」と吠えますが、イエネコはそんなふうには鳴きませんよね。この声の違いは声帯のヒダの作りに由来するようで、トラはイエネコと同じ作りをしているのだとか。トラは「ガオー」とは吠えず、イエネコと同じように「シャーッ」だそうですが…300kgのトラに近くで「シャーッ」と鳴かれたら、恐ろしすぎますね…

「トラ柄」でおなじみの縦縞は、実はネコ科動物の中ではトラだけが持っているそうです。イエネコにも一部分だけ縦縞の子がいますが、全身縦縞はトラだけとのこと。ちなみに、阪神タイガースの縦縞は白と黒。

赤道直下のトラは色が濃い目で、北へ行くほど色が薄く白っぽくなり、体も大きくなります。これは動物全てにいえるようで、「ベルクマンの法則」と呼ばれます。

柄の点では、トラはイエネコと共通点があります。それは、縞模様が入る遺伝子を持つ場合、必ず尻尾の先が黒になるということです。ご自宅のネコさんはいかがですか?トラと一緒ですか?

模様に由来するであろう名前の1つに「トラちゃん」がありますが、アニコム損害保険会社が毎年行っている猫ちゃんの人気名前ランキング では、2008年に第5位に入って以来、トップ10にランクインしなくなってしまいました。今年のAREのお陰で、また「トラちゃん」が増えたりして。

トラの病気

2015年〜2021年に世界中で管理下にいて死亡したトラ44頭の死因を調べたところ、泌尿器疾患が31%、腫瘍が15%だったそうです。イエネコの死因は、泌尿器疾患29.8%、腫瘍20.3%で、トラと同じような割合でした。ちなみに、犬の死因は腫瘍が18%、心臓病が17%で、泌尿器疾患は15%でした。

ただ、残念なことに、世界的なトラの一番の死因は「人間による乱獲」といわれています。IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストに掲載されており、2022年時点で世界で3,140頭しかいないといわれています。

まとめ

今回は、トラについてご紹介しました。トラは「自宅のネコの巨大化バージョン」と思っていただいてもよい部分が多く、改めてご自宅の猫ちゃんをじっくり観察してみると面白い発見がありそうです。

また、日本国内の動物園には約50頭のトラが飼育されているので、機会があれば実物を観察してみてはいかがでしょうか。顔を洗う仕草や、耳の後ろをボリボリとひっかく様子、それに寝てる姿など、トラとネコは誰から教わったわけでもないのに全く同じ…これも不思議ですよね。