ここまでのシリーズでは、

  • 猫の歯肉口内炎とはどんな病気か
  • 飼い主さんが気づくサイン
  • 治療の選択肢
  • 全身麻酔のリスク

についてお話してきました。

そして、歯肉口内炎の治療として抜歯を検討するとき、
多くの飼い主さんが心配されるのがこの質問です。

「歯を全部抜いたら、ごはん食べられなくなりませんか?」

これはとてもよく聞かれる疑問です。

結論から言うと、

猫は歯がなくても食べることができます。

むしろ口内炎の痛みがなくなることで
食欲が改善する猫も多いのです。

猫は人のように「噛んで食べていない」

人間は食べ物を

歯で噛み砕いてから飲み込みます。

しかし猫は少し違います。

猫の食べ方は

  • 前歯でつかむ
  • 奥歯で軽く砕く
  • そのまま飲み込む

というものです。

実際にキャットフードを食べている猫を観察すると、
ほとんど噛まずに飲み込んでいることが分かります。

そのため歯がなくても、

  • あごの力

を使って食事をすることができます。

抜歯後に食欲が改善する猫も多い

歯肉口内炎の猫では、
口の中に強い痛みがあります。

そのため

  • 食べたいのに食べられない
  • 食べながら口を振る
  • ごはんを落とす

といった行動が見られます。

抜歯によって炎症が落ち着くと、

痛みがなくなり、むしろ食欲が改善する猫が多い

ことが知られています。

歯肉口内炎の抜歯治療では
60〜80%の症例で症状の改善がみられる
と報告されています
(Jennings et al., 2015)。

当院でも、歯肉口内炎で抜歯を行った猫では

平均体重が +0.22kg 増加しており、
多くの猫で食事状態の改善がみられました。

抜歯後の食事はどうなる?

手術直後は口の中に傷があるため、
柔らかい食事から始めます。

例えば

  • ウェットフード
  • ふやかしたドライフード

などです。

通常は数日〜1週間ほどで
多くの猫が普通に食べられるようになります。

その後は

  • ドライフード
  • ウェットフード

どちらでも食べることができます。

実際には、歯がない状態でもドライフードを食べる猫は多いです。

全部の歯を抜いても生活できる?

歯肉口内炎の治療では、
すべての歯を抜く「全顎抜歯」を行うこともあります。

これを聞くと

「本当に生活できるの?」

と心配される方もいます。

しかし実際には

  • 普通に食事できる
  • 毛づくろいもできる
  • 普段の生活も問題ない

猫がほとんどです。

むしろ

  • 表情が穏やかになる
  • 活動量が増える
  • よく食べるようになる

といった変化を感じる飼い主さんも多くいらっしゃいます。

抜歯はかわいそう?

歯を抜くと聞くと

「かわいそう」

と感じる方もいらっしゃいます。

しかし歯肉口内炎では、

歯があること自体が炎症の原因

になっている場合があります。

つまり

歯を残すことが
痛みを残してしまう可能性もあるのです。

抜歯は決して「最後の手段」ではなく、

猫の痛みを取り除くための治療

の一つです。

まとめ

猫は人とは食べ方が違うため、

歯がなくても食事をすることができます。

そして歯肉口内炎の場合、
抜歯によって

  • 痛みが減る
  • 食欲が改善する
  • 体重が増える

といった変化が見られることも多いです。

もちろん治療の選択は猫ごとに異なりますが、
歯肉口内炎の猫にとって抜歯は

生活の質を改善する治療

になることがあります。