最近、診察室でこんな質問が増えています。
「予防、したほうがいいんですか?」
SFTSという言葉をニュースで見た、マダニのことが気になっている——そういう飼い主さんが、ここ数週間で明らかに増えました。
その感覚は正しいと思います。今年5月、相模原市内で初めてSFTSの感染者が確認されました(相模原市発表、2026年5月11日)。市内の動物病院からも、動物の感染報告が上がっています。
「うちの子は室内飼いだから大丈夫」——そう思っている方にこそ、読んでもらいたい記事です。
SFTSとは何か
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、マダニが媒介するウイルス性感染症です。人の致死率は10〜30%。現時点で、承認されたワクチンも特効薬もありません。
猫にとってはさらに深刻で、感染した場合の致死率は60〜70%とされています。発熱、食欲不振、黄疸などの症状が現れ、短期間で重篤化することがあります。
これまでSFTSは「西日本の病気」とされてきました。しかし昨年7月には神奈川県松田町でも人への感染が確認されており、今回の相模原市内感染は県内での人への感染確認として2例目となります。相模原市の担当者は「発生地域が年々東日本に拡大している」と話しています(タウンニュース、2026年5月16日)。
他人事ではなくなっています。
「室内猫だから大丈夫」は本当か
診察室でよく聞く言葉です。
でも、こんなことを話してくれた飼い主さんがいました。「家の中でマダニみたいな虫が歩いていて、怖くなってしまって」。また別の方は、「窓から飛び込んできた虫を、猫がガジガジかじっていた」と。
完全室内飼いでも、マダニがゼロとは言えない理由がいくつかあります。
人間の衣服や靴に付着して玄関から侵入するルートが、感染経路の20〜40%を占めるとされています。アウトドアが好きなご家族、お子さんが公園で遊んできた日、犬との同居——こうした日常の場面で、知らずにマダニを持ち込んでいることがあります。
「室内にいるから安全」という前提は、少し見直してほしいのです。
猫がSFTSに感染したとき、飼い主も危ない
重要な点をもう一つ。
SFTSに感染し発症した猫の血液や唾液には、ウイルスが含まれています。体調が悪い猫の世話をする際、素手で触れたり、引っ掻かれたりすることで、人への感染が起こる可能性があります(神奈川県ホームページより)。
猫を守ることは、家族を守ることでもあります。
今すぐできること
1.猫を外に出さない
最も確実な予防です。完全室内飼いを徹底することで、マダニに直接刺されるリスクをほぼゼロにできます。
2.レボリューションプラスによる定期予防
月に1回、背中に垂らすだけ。それだけです。
レボリューションプラス(セラメクチン+サロラネー配合)は、ノミ・マダニ・フィラリア・耳ダニ・消化管内寄生虫まで広くカバーする予防薬です。マダニへの有効性は99%以上という試験データもあります(Parasites & Vectors, 2025)。当院でも最も広くお勧めしている薬剤です。
今はちょうど、マダニが最も活発に動く時期です。まだ予防していない方は、このタイミングで始めてほしいと思います。
3.帰宅後のブラッシング・体表チェック
外出がある猫や、同居犬がいる場合は、帰宅後に目の周り・耳周辺を中心に確認する習慣をつけてください。マダニは痒みを感じさせる物質を注入するため、猫は刺されても気づきません。目視での発見が唯一の方法です。

「予防してたほうがいいんですか?」への答え
はい。特に今は。
SFTSのニュースを見て不安になっている方へ——猫を過度に怖がる必要はありません。ただ、備えることはできます。月に1回、背中に薬を垂らす。それだけで、猫にとっても、一緒に暮らす家族にとっても、リスクを大きく下げることができます。
気になる方は、次回の診察のときに気軽に相談してください。
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参考情報
相模原市 感染症情報センター「ダニ媒介感染症」
タウンニュース「相模原市内で初確認 マダニ媒介の感染症『SFTS』」2026年5月16日
神奈川県「ペットの重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について」
Vatta et al. “Efficacy of Revolution® Plus against ticks in cats.” Parasites & Vectors, 2025.





