舌を器用に使って錠剤を吐き出す。前足で飼い主さんの手をぐいっとプッシュして断固拒否。かろうじて口に入ったと思ったら、泡だらけになってよだれをたらしながら走り去っていく——。

猫の投薬あるある、心当たりはありますか?

私自身も猫の飼い主です。うちの子は喘息があって、ステロイドの錠剤を飲んでいます。咳の回数が減るので効いているのはわかっている。でも、チュールに包んだ1/4錠——あの極小サイズを、なぜか毎回見つけ出してオエッと吐き出すんです。

その精度、もはや才能だと思います。

そこで吸入薬に切り替えてみたら、こちらは難なくクリア。同じ薬効でも、形が変わればすんなり受け入れてくれることがある。猫って、本当に面白い生き物です。

治療が、猫との関係を壊してしまうとしたら

診察室でよく聞く話があります。投薬のたびに猫が逃げるようになった。さっきまでそこにいたのに、気配を消してどこかへ行ってしまう。抱っこしようとすると身構えるようになった——。

元気にしてあげたくて始めた治療が、毎日の関係性を少しずつ傷つけていく。飼い主さんも猫も、さみしい思いをする。これは決して「飼い主の努力が足りない」ということではありません。

猫はプライドが高い子もいれば、とても繊細な子もいる。ちょっとした味の変化、薬の舌触り、いつもと違う飼い主さんの雰囲気——そういうものを敏感に察知します。飼い主さんの挙動がいつもと少し違うだけで、さっきまでそこにいたのにふっといなくなってしまうことだってあります。

「飲ませる方法」はひとつじゃない

うちのクリニックで実際に相談しながら試している方法をいくつかご紹介します。

錠剤を粉にして小さなカプセルへ

サイズと形を変えるだけで飲めるようになる子がいます。
チュールでコーティングして喉奥に流し込む
チュール好きな子なら有効なことがあります。ただし……うちの子のように見破る達人もいます。

喉の奥にピンポイント投与

舌の手前に置いても吐き出してしまう場合、喉の奥に直接置く方法。コツが要りますが、慣れると成功率が上がります。

液剤・吸入薬・注射への変更

剤形そのものを変える選択肢です。すべての薬剤で対応できるわけではありませんが、形が変わるだけで受け入れてくれる子がいます。
腎臓病の子に教わったこと——「やれるものから」でいい
猫に多い病気のひとつに、腎臓病があります。治療の選択肢は薬・食事・サプリメントと複数あって、すべてを受け入れてくれる子もいれば、食事療法だけなら続けられる子、サプリなら何とかという子もいます。

「全部やらないとダメですか?」と聞かれることがあります。

そんなときは、こう答えています。やれるものから始めて、少しずつ増やしてみましょう、と。完璧な治療を無理に押しつけるより、続けられる治療を一緒に見つけていくほうが、長い目で見て猫のためになることが多い。病気とうまく付き合っていくというのは、そういうことだと思っています。

「無理しない」も、立派な選択肢です

私が診察室で大切にしていることがあります。それは、「どこまで許容できるか」を一緒に考えること。

治療の目的は、猫を元気にすることだけじゃない。猫と飼い主さんが穏やかな時間を過ごせること——それも含めて、治療だと思っています。どうしても飲めない薬があるなら、「この薬は無理しないでおこう」という判断をすることもあります。

メリットとデメリットを正直に話し合って、一緒に決めていく。それが、うちのクリニックのやり方です。

あなたの猫はどんなタイプですか?プライドが高い子?繊細な子?「こうやって乗り越えた!」という体験談、ぜひInstagramのコメントで教えてください。

投薬で困っていることがあれば、診察の際に気軽に相談してください。「こうしなければ」ではなく、あなたの猫に合った方法を一緒に探します。