はじめに

近年、「保護猫」という言葉を耳にする機会が増えました。
SNSでも譲渡会や里親募集の投稿を見かけるようになり、
「保護猫を家族に迎えたい」と考える方も少しずつ増えています。

保護猫を迎えるというのは、
ひとつの命を救うというだけでなく、
その猫に“人と暮らす幸せ”をもう一度感じてもらう行為でもあります。

📖 目次

  • 保護猫はどこからやってくるの?
  • 医療の現場から見えるもの
  • 譲渡というゴールの先に
  • どんな出会いにも、命の尊さがある
  • 命のバトンを受け取るということ
  • たんぽぽキャットクリニックから

保護猫はどこからやってくるの?

「保護猫」といっても、その背景はさまざまです。

  • 飼い主さまの高齢化や病気などで飼育を続けられなくなった猫。
  • 多頭飼育が崩壊して、劣悪な環境から救い出された猫。
  • 交通事故などでけがをして保護された猫。
  • あるいは母猫とはぐれてひとりで持ち込まれた子猫。

なかには、
たっぷりの愛情を注がれて育ってきたけれど、
飼い主さまが亡くなられて行き場を失った猫もいます。
一方で、人の愛情を知らずに育ち、初めて人のぬくもりに触れる子もいます。

それぞれの猫たちに、それぞれのストーリーがあります。
どの子も、これまでの猫生(ねこせい)を懸命に生き抜き、
いま「温かいお家の中で、安心して眠る」ことを願っているのです。

医療の現場から見えるもの

保護された猫たちは、健康状態も年齢もさまざまです。
中には感染症(FIVやFeLV)を持っていたり、
FIP(猫伝染性腹膜炎)や慢性腎臓病など、
長期のケアが必要な病気を抱えている子もいます。

また、外での生活が長かった子は、栄養不良や歯のトラブルを抱えていたり、
高齢の猫では心臓や腎臓に問題を抱えていることも少なくありません。

そうした医療の支えがあってこそ、
保護猫たちは「新しい生活へのスタートライン」に立つことができます。
そして何よりも、人の手を信じてもう一度、穏やかに過ごせるようになることが大切です。

譲渡というゴールの先に

譲渡は、ゴールではなく“はじまり”です。

新しい家で過ごす猫たちには、
定期的な健康チェックやワクチン、感染症のフォローアップだけでなく、
心のケアも必要になります。

たとえば、劣悪な環境で育った猫は、最初は人を怖がることがあります。
けれど、時間をかけて名前を呼ばれ、撫でられ、
やがて自分から寄り添うようになる──そんな変化が見られるのは、何よりの喜びです。

若い猫さんの成長を見守るのも素敵ですが、
年を重ねた猫さんに、最後の時間を安心して過ごしてもらうことも、
立派な“保護猫譲渡”の形です。

どんな出会いにも、命の尊さがある

猫を迎える方法は、保護猫に限りません。
ペットショップで出会う猫たちも、同じ命を持つ存在です。

保護猫も、ショップの猫も、どちらも“生きて、誰かと出会うために”この世に生まれてきた命。
出会いのかたちは違っても、猫を家族として迎えるという行為は、どちらも同じように尊いと思っています。

「どこから来たか」ではなく、「いま、誰と生きているか」。
その時間を大切にできるかどうかが、猫にとっての幸せなのだと思います。

命のバトンを受け取るということ

保護猫を迎えることは、
癒やしと愛情を与えることで、その猫に「生きる希望」を取り戻してもらうこと。
でも実は、救われるのは猫だけではありません。

たった一匹の命でも、救われることで変わる世界があります。
「この子をうちの子にしよう」と決めたその瞬間、
その猫の未来が明るく照らされると同時に、
あなたの毎日にも、あたたかい光が差し込むようになります。

猫と暮らすということは、
“お世話をしなければならない”という小さな責任の積み重ねでもあります。
朝はごはんの催促、夜は布団のど真ん中を占領され、
ときに「完全下僕生活」が始まるかもしれません。

けれどその見返りに、
仕事から帰ったら「にゃー(おかえり)」と出迎えてくれる声があって、
とびきりの可愛さで隣に寄り添ってくれる夜がある。
猫を吸って癒やされ、撫でているだけで心が落ち着く。

猫と暮らすことは、少し大変で、ものすごく幸せなこと。
保護猫を迎えるというのは、そんな日々を手に入れるということでもあります。

たんぽぽキャットクリニックから

私たちは、日々の診療を通して多くの猫たちと出会い、
その一つひとつの命に向き合っています。

「助ける」だけでなく、「支え合う」こと。
人も猫も安心して生きられる仕組みを、地域の中で作っていけたらと願っています。

そして何より──
人は猫様のために、今日もたくさん働きましょう。
その報酬は、きっと猫たちのまなざしとゴロゴロ音が返してくれます。たんぽぽキャットクリニックが応援しています♪