こんにちは。たんぽぽキャットクリニックです。
今回は、猫のFIP(猫伝染性腹膜炎)について、飼い主さんからよくいただく質問をQ&A形式でまとめました。
「FIPはうつるの?」「治療できるの?」「費用は?」
そんな疑問にひとつひとつお答えしていきます。
Q1. FIPってどんな病気ですか?
FIPは「猫伝染性腹膜炎」という病気です。
猫腸コロナウイルス(FCoV)が体の中で突然変異してしまい、免疫が暴走して全身に炎症が広がるため、様々な症状がでます。
症状の出方には2つのタイプがあります。
- ウエットタイプ:お腹や胸に水(腹水や胸水)がたまる
- ドライタイプ:お腹にしこりができたり、神経や目に症状が出る
昔は「診断=余命わずか」と考えられていた病気ですが、今は治療できる時代になりました。
Q2. 他の猫や人にうつりますか?
FIPそのものは猫から猫へ直接うつることはありません。
ただし、もともとの「猫腸コロナウイルス(FCoV)」はトイレや唾液を通じてうつるため、多頭飼育ではすでに蔓延していると考えてよいでしょう。ただ、FCoVは軽い下痢程度で、ほとんどの子は症状はなく、ウイルスを持っているだけのキャリアとなります。
人や犬など、猫以外にうつることはありません。
Q3. 子猫がかかりやすいって本当ですか?
はい、FIPの発症は85%が3歳以下の若い猫で、その中でも1歳未満の子猫に多いとされています。
もちろん成猫やシニア猫も発症することはありますが、子猫は免疫がまだ未発達なためリスクが高いのです。
Q4. どんな症状が出るのですか?
- 発熱(抗生物質を使っても下がらない熱)
- 食欲が落ちる、痩せてきた、太れない
- お腹が膨らむ(腹水)
- 息苦しそうにする(胸水)
- 目が白っぽくなる
- 後ろ足のふらつきや麻痺
- 「なんとなく元気がない」「食べ方にムラが出た」などの小さなサインから始まることもあります。
Q5. どうやって診断するのですか?
「この検査だけで確定」というものはありません。
血液検査・エコー検査・遺伝子検査などを組み合わせて、FIPの可能性が高いと診断します。
当院でも複数の検査をあわせて慎重に判断しています。
Q6. FIPは治療できますか?
はい、現在は抗ウイルス薬による治療が可能です。
- GS-441524
- モルヌピラビル
- レムデシビル
といった薬が使われ、実際に多くの猫が回復しています。
投薬は毎日必要で、治療期間はおよそ84日間(3か月ほど)。
経過を見ながら血液検査や体重測定も行います。
2025年8月現在、当院では42日間での治療も始めており、13例中13例が42日間で寛解しました。
Q7. どのくらい治りますか?
海外の報告では8〜9割の猫が寛解したとされています。
当院でも2025年5月までに170例を治療し、寛解率は87%という結果でした。
早期に気づいて治療を始められるかどうかが、回復の大きなポイントになります。
Q8. 再発することはありますか?
はい、あります。
FIPは「完治」というより「寛解」という言葉を使います。
治療終了後1〜2か月以内に再発することがあり、再発率は10〜15%ほど。
ただし再発しても、再治療で再び元気になるケースが多いです。
Q9. ワクチンで予防できますか?
海外には点鼻ワクチンが存在しましたが、効果は十分ではなく、日本では承認されていません。
現状ではワクチンで予防する方法はありません。
清潔な環境で飼育し、ストレスを減らすことが発症予防につながります。
Q10. 保険は使えますか?
これは保険会社や契約内容によって異なります。
多くの場合、FIPの治療に使う薬は未承認製剤のため保険適応外です。
ご加入の保険会社に必ず確認してください。
Q11. 治療費はどのくらいかかりますか?
体重や使う薬、症状の程度、治療の期間によって変わりますが、2kgの猫ちゃんで42日間の治療だと、約15万円ほどです。
高額ですが、かつて「助からない」とされたFIPに治療の選択肢があることは大きな希望です。
Q12. 治療後は普通の生活に戻れますか?
はい、多くの猫ちゃんが元気に暮らしています。
ただし治療終了後1〜2か月は再発に注意が必要です。
その時期を過ぎれば、他の猫と同じように生活できるケースがほとんどです。
Q13. 飼い主ができることはありますか?
- 投薬を正しく、決まった時間に行う。※おくすりは苦みがなく、チュールで簡単に投与できます。
- 毎日の体重を測って記録する
- ごはんを食べやすい環境を整える
- ストレスを減らし、安心して過ごせるようにする
長期治療には飼い主さんの協力が不可欠です。
「治療はチーム戦」――獣医師と飼い主さんが一緒に取り組むことが大切です。

まとめ
FIPはかつて「絶望の病」とされていました。
でも今は治療できる時代です。
当院でもこれまでに170例を治療し、約87%の猫が寛解しました。
「なんとなく元気がない」「食べ方が変だな」と思ったら、早めにご相談ください。
小さな気づきが、猫ちゃんの未来を大きく変えます。





