猫は“少し食べないだけ”でも体に大きな負担がかかります。
とくに 高齢の猫、持病(腎臓・心臓・甲状腺など)を持っている猫 は、たった半日でも体調が大きく崩れてしまうことがあります。
これは、猫が絶食状態に弱く、体脂肪が急速に肝臓に動員されてしまう特性があるためです。
この仕組みは、猫の肝リピドーシス(脂肪肝)の研究で繰り返し示されています
(参考:Center, 2005/Valtolina & Favier, 2016)。
この記事では、
「猫が食べないとき、最初の24時間で飼い主さんができること」 を順番にわかりやすくまとめました。
1.“食べない”は猫にとって危険なサイン
猫は絶食に弱い動物です。
食べない期間が続くと、体脂肪が一気に肝臓へ流れ込み、肝臓の処理能力を超えてしまいます。
この「急激な脂肪動員 → 肝機能障害」という流れは、
猫の栄養代謝に関する論文でも説明されています
(参考:Zoran, 2016)。
❗特に注意すべき猫
- シニア猫(10歳以上):筋力低下が早い
- 痩せている猫:低血糖・電解質異常が起こりやすい
- 肥満の猫:肝リピドーシスになりやすい(複数論文で指摘)
- 腎臓・心臓・甲状腺の病気がある猫:病態が急変することがある
- 慢性口内炎・歯周病がある猫:痛みで“食べたいのに食べられない”
「1〜2日くらい様子を見る」は危険 というのは、こうした代謝的リスクが背景にあります。
2.まず“最初の15分”で緊急チェック
猫が食べないと気づいたら、まず次の症状がないか確認してください。
❗すぐに受診レベルの危険サイン
- ぐったりして反応が弱い、目がうつろ
- 急に呼吸が速い/息が荒い
- 何度も吐いている・よだれが垂れている
- 口に食べ物を入れてもすぐ出してしまう、飲み込まない
特に、無理に食べさせようとして誤嚥を起こすと危険です。
また、長い絶食後に急に栄養を入れると、リフィーディングシンドロームと呼ばれる電解質バランスの乱れが起きることがあります。
これは、飢餓状態で体が“栄養を処理する準備”を失っているところへ、急にエネルギーを入れることで起こる代謝異常で、
猫の脂肪肝症例でも報告されています
(参考:Brenner et al., 2011)。
→ これらの症状や状況の場合は、夜間でも早めの受診を。
3.最初の24時間でできる家庭ケア
危険サインがなければ、ここから家庭でできる対処を試してみましょう。
① ごはんの“匂い”を強くする(最も効果的)
猫は嗅覚の動物。
匂いが弱いと食欲が刺激されません。
効果的な方法
- ウェットフードを軽く温める(人肌)
- 電子レンジで5~10秒温める
- よくほぐして香りを引き立てる
- スープタイプ総合栄養食(嚥下しやすい)
- 鼻づまりの猫には特に効果があります。
② フードの種類を変えてみる
- パウチ → 缶詰
- ドライ → ウェット
- チキン → フィッシュ
- シニア → アダルト
「急に嗜好性の高いものしか食べなくなった」場合、
背後に病気があることが多いため、改善が続かなければ検査を。
食欲不振時の栄養管理の重要性は、
食欲不振(アノレキシア)についての報告でも示されています
(参考:Michel, 2016)。
③ 食事場所と環境を見直す(ストレス対策)
猫は環境変化にとても敏感です。
- 置き場所が寒い/騒がしい
- 他の猫が気になる
- トイレの近く
- 模様替えや新しい匂い
→ 環境を整えるだけで食べ始めることもあります。
④ 脱水をチェックして“水分”を足す
食べないと同時に水も飲まないことがあります。
工夫例
- ぬるま湯を置く(器を変えてみる)
- スープごはん(総合栄養)
- ウェットフードを少し水で溶く
- 皮膚テント(皮膚のつまみ戻り)で脱水の目安がわかることもあります。
⑤ 緊張やストレスから食べないこともある
来客・天候・引っ越しなど、
ちょっとした刺激で食欲が落ちることもあります。
- 隠れ場所を作る
- そっとしておく
- 落ち着く場所で食事提供
無理に食べさせようとすると逆効果です。
4.絶対にやってはいけないNG行動
❌ 人の薬・市販薬を使う
→ 中毒の危険性
❌ 無理やり口へ押し込む
→ 誤嚥やリフィーディングシンドロームのリスク
❌ “水だけ”で様子をみ続ける
→ 脱水が進み、代謝異常が悪化
❌ 「わがまま」と決めつける
→ 多くは痛み・炎症・病気が背景にある
5.受診すべきタイミング(ここを越えると危険)
❗受診基準
- 24時間以上食べない
- シニア猫は12〜18時間でも受診推奨
- 嘔吐+食欲低下
- 下痢+食欲低下
- 触ると痛がる
- 呼吸が荒い
- 水も飲まない
症状が軽く見えても、
猫は不調を隠す動物です。
6.まとめ:迷ったら早めの相談を
猫がごはんを食べない理由は、本当にさまざまです。
- 口の痛み
- 脱水
- 内臓疾患
- 感染症
- ストレス
- 季節の変わり目
- 老化の初期
ただし共通しているのは、
「早く気づいたほど回復しやすい」 ということ。
猫が食べないと、とても心配になりますよね。
飼い主さんのその“違和感”は、案外正しいことが多いです。
「ちょっと心配だな」と思ったら、早めに かかりつけの動物病院 に相談してみてください。
早く動くほど、猫ちゃんの負担は少なくすみます。
📚 参考文献(Evidence)
Center SA. Feline hepatic lipidosis. 2005.
→ 食欲不振と脂肪肝の関係、病態の基本を説明。
Valtolina C, Favier RP. Feline hepatic lipidosis: from pathophysiology to clinical management. 2016.
→ 脂肪動員と肝臓処理能力の関係。
Zoran DL. From Anorexia to Obesity: The Role of Nutrition in Feline Metabolic Disorders. 2016.
→ 猫の代謝特性と栄養の重要性。
Michel K. Management of Anorexia in the Cat. 2016.
→ 食欲不振時の栄養管理・早期介入の重要性。
Brenner JS et al. Refeeding syndrome in a cat with hepatic lipidosis. 2011.
→ 絶食後の急な給餌による電解質異常リスク。






