🐾 はじめに

猫の寿命が延びるにつれて増えている病気のひとつが、慢性腎臓病(CKD)です。 症状がはっきり出る頃にはすでに進行していることが多いため、「どうやって検査して診断するか」を知っておくことがとても大切です。

そのときに基準となるのが、IRIS分類(国際腎臓学会による診断基準)です。
血液検査・尿検査・血圧測定などの結果を組み合わせ、腎臓病のステージを1から4までに分けます。

今回は、猫の慢性腎臓病を診断するために必要な検査や、IRIS分類の考え方を詳しくご紹介します。

🐾 猫の腎臓病を判断するIRIS分類とは?

IRIS(International Renal Interest Society:国際腎臓学会)は、犬や猫の腎臓病に関する診断と治療の国際的な指針をまとめています。

猫の慢性腎臓病においては、ステージ1〜4の分類を用いて病気の重症度を評価します。

ステージ1:血液検査ではまだ正常値の範囲でも、SDMAや尿検査で異常が出る段階

ステージ2:軽度から中等度の腎機能低下。クレアチニンやSDMAの上昇が確認される

ステージ3:腎不全が進み、体重減少や食欲低下など臨床症状が目立ってくる

ステージ4:末期の腎不全。強い症状が出て日常生活に大きく支障をきたす

このように、IRIS分類は猫の腎臓病を世界共通の基準で判断する仕組みです。

🐾 猫の腎臓病検査|IRIS分類に使われる血液検査・尿検査・血圧測定

血液検査

クレアチニン(Cre)
腎臓のろ過機能を示す代表的な数値。ただし、腎機能が75%以上失われないと上昇しにくく、早期発見には不十分。

BUN(尿素窒素)
腎臓の機能を示しますが、食事や脱水の影響を受けやすいため単独での判断は難しい。

SDMA
腎機能が40%失われた時点で上昇する早期マーカー。クレアチニンより早く異常を見つけられるため、猫の腎臓病の早期発見に非常に有効です。

尿検査

尿比重(USG)
腎臓が尿を濃縮できているかを確認。腎臓病では薄い尿しか作れなくなります。

尿タンパク(UPC比)
尿にタンパクが出ていないかをチェック。持続的なタンパク尿は腎臓にダメージを与えます。

血圧測定
慢性腎臓病と高血圧は深く関係しています。
高血圧は腎臓に追加のダメージを与えるだけでなく、網膜剥離・脳・心臓にも悪影響を及ぼすため重要な検査です。

🐾 IRIS分類以外で役立つ猫の腎臓病検査(超音波・電解質など)

IRIS分類だけではわからない部分を補う検査もあります。

腹部超音波検査
腎臓の大きさや形、内部の状態を観察。慢性腎臓病では「小さく萎縮した腎臓」が見られることが多いです。嚢胞や腫瘍の有無も確認できます。

尿沈渣検査
尿を顕微鏡で観察し、細胞・結晶・細菌の有無をチェック。尿路感染症などの発見につながります。

電解質(リン、カリウムなど)
腎臓病ではリンが蓄積したり、カリウムが低下することがあり、症状の進行や体調に大きく影響します。

体重・筋肉量
腎臓病では筋肉が減少(サルコペニア)しやすいため、数値と併せて体格の変化も重要です。

🐾 猫の腎臓病を早期発見するには?SDMAと定期検査が重要

腎臓病は「症状が出たときにはかなり進んでいる」ことが多い病気です。
従来のクレアチニンでは遅く、SDMAを活用することが早期発見のカギになります。

また、シニア猫(7歳以上)では年1〜2回の健康診断(血液検査・尿検査・血圧測定)が推奨されます。

🐾 猫の腎臓病の検査結果をどう活かすか?

  • IRIS分類でステージを決定する
  • 血液・尿・血圧の3本柱+超音波や電解質で補助的に評価する
  • その結果をもとに、治療や管理のプランを立てる

腎臓病は「数値で管理する病気」です。
数値を追いかけることで、治療が効いているか、生活の工夫が合っているかを判断し、必要に応じて調整します。

🐾 飼い主さんへのメッセージ

腎臓病の診断は、ただ「ある・なし」を決めるだけではありません。
どのステージにいるのか、どんなリスクがあるのかを把握することが、猫にとって最適なケアにつながります。

数値を聞いて落ち込む必要はありません。
「今の段階を知ること」は、これからどう付き合っていくかを考えるための第一歩です。

猫の慢性腎臓病は、正しく診断し、定期的に見守ることで進行を遅らせ、猫の快適な生活を守ることができます。