FIV(猫免疫不全ウイルス感染症)、いわゆる「猫エイズ」は名前から怖い印象を持たれがちです。
しかし正しい知識を持つことで、FIV陽性の猫とも安心して暮らしていくことができます。
ここでは 飼い主さんからよく聞かれる質問にお答えします。
目次
Q1. 猫エイズは人や犬にうつりますか?
Q2. FIV陽性の猫はどれくらい生きられますか?
Q3. FIV陽性と陰性の猫を一緒に飼えますか?
Q4. どんな症状が出ますか?
Q5. 感染経路は?食器の共用でもうつりますか?
Q6. 偽陽性とはなんですか?
Q1. 猫エイズは人や犬にうつりますか?
A. うつりません。猫だけに感染する病気です。
FIVはレトロウイルス科レンチウイルス属に属するウイルスで、人のHIVと同じ仲間です。ですが、種特異性が強いため、感染するのは猫だけです。
そのため、人間や犬・ウサギ・他の動物にうつることはありません。抱っこや一緒に寝ることも問題ありません。
飼い主さんが心配する必要があるのは「人にうつるかどうか」ではなく、猫自身の体調を守ることです。免疫力が落ちると感染症にかかりやすくなるため、定期健診や生活環境の整備が大切です。
Q2. FIV陽性の猫はどれくらい生きられますか?
A. 適切に管理すれば、健康な猫と同じくらい長生きできることもあります。
「猫エイズ=すぐに死んでしまう」というイメージは誤解です。
VINの大規模研究では、FIV陽性と陰性の猫で寿命に差がほとんどないという報告もあります。
実際に、FIV陽性でも10年以上無症状で暮らす猫は珍しくありません。
一方で、免疫力が下がると口内炎や感染症が悪化し、生活の質や寿命に影響することもあります。
長生きのために大切なことは:
- 定期健診(半年ごと)
- 口腔ケア(歯科処置やデンタルケア)
- 二次感染を早期に治療すること
つまり「FIV陽性=余命が短い」とは限らず、ケア次第で長く暮らせる病気と考えてよいでしょう。
Q3. FIV陽性と陰性の猫を一緒に飼えますか?
A. けんかがなければリスクは低く、同居も可能です。
FIVの主な感染経路は咬傷(噛み傷)です。猫どうしが激しくけんかをしなければ、家庭内で感染が広がるリスクは低いとされています。実際に、FIV陽性猫と多数の陰性猫が長期間同居しても感染しなかったという報告もあります。
ただしリスクはゼロではありません。
- 去勢していないオス猫どうし
- 相性が悪い猫どうし
- 多頭飼育でストレスが強い環境
では感染の可能性が高まります。
安全に同居させるためには、
- 去勢・避妊手術を済ませる
- トイレや食器を頭数+1以上に用意する
- 多頭飼育は性格や相性を見て判断する
といった工夫が必要です。
Q4. どんな症状が出ますか?
A. 長い無症状期があり、その期間を長く保つための体調管理が大切です。
FIV感染は大きく3段階に分けられます。
急性期(感染後すぐ〜数か月)
発熱やリンパ節腫大などが出ますが、軽度で気づかれないことも多いです。
無症状期(数年〜十年以上続くことも)
見た目は健康で、普通の猫と変わらない生活ができます。
発症期(免疫不全が進行)
口内炎、歯肉炎、慢性下痢、体重減少、腎臓病、リンパ腫などの病気が出やすくなります。
FIV陽性の猫と暮らす上で最も大切なのは、この無症状期をできるだけ長く維持することです。
そのために:
- 定期健診
- 室内飼育でストレスを減らす
- 栄養バランスのとれた食事
- 予防医療(ワクチンやフィラリア予防など)
を徹底することが推奨されます。
Q5. 感染経路は?食器の共用でもうつりますか?
A. 主に咬傷です。日常接触や食器の共用では感染しにくいです。
最も多い感染経路は、猫どうしのけんかによる深い噛み傷です。
母猫から子猫への感染(母子感染)もありますが頻度は高くありません。
一方で、グルーミングや食器の共用での感染はまれです。通常の生活接触では広がりにくいため、家庭内で落ち着いた関係が築ければ、感染の心配は少なくなります。
Q6. 偽陽性とはなんですか?
A. 「感染していないのに陽性と出てしまうこと」です。
FIVの検査は、動物病院で行う簡易キット(ELISAやSNAP®)が一般的です。
これらは「FIV抗体」を測定しますが、抗体は必ずしも「感染そのもの」を意味するわけではありません。
以下の場合、感染していなくても陽性反応が出る(偽陽性)ことがあります:
- FIVワクチンを打った後
- 母猫がFIV陽性の子猫(移行抗体)
- 母猫がFIVワクチンを接種している子猫
- 実際にFIVウイルスに感染している場合
つまり「陽性」と出ても、本当に感染しているのかどうかを見極める必要があるのです。
確定診断のステップ
一次検査:動物病院内の簡易キット(ELISAやSNAP®)
スクリーニングとして行います。結果が陽性なら、60日後に再検査して確認します。
二次検査:PCR検査
ワクチン歴が不明な猫や、ワクチン接種済みでも感染が疑われる場合に有効です。
ウイルスそのもののDNAやRNAを直接検出でき、陽性なら感染確定です。
ただし、ウイルス量が少ない時期や変異株では偽陰性になることもあります。
飼い主さんへのポイント
「陽性=感染確定」ではありません。
簡易検査は便利で精度も高いですが、ワクチンや母子抗体の影響を受けることがあります。1回の検査だけで結論を出すのではなく、再検査や追加検査を組み合わせて判断することが大切です。
検査はステップを踏んで確認するのが基本です。
一次検査 → 再検査 → PCR検査という流れを経ることで、より正確な診断につながります。「最初に陽性と出たけど本当かな?」という不安に答える仕組みがあると理解してください。
ワクチン歴や母猫の状態を必ず伝えましょう。
診断の正確さは「背景情報」に大きく左右されます。過去にFIVワクチンを接種したことがあるか、母猫が感染していたかどうかなど、小さな情報も獣医師に伝えることで誤診を防ぐことができます。
偽陽性は珍しいことではありません。
ワクチン接種後や母子抗体による一時的な陽性はしばしば見られます。検査で陽性と出ても、すぐに悲観せず、落ち着いて次のステップに進むことが何より重要です。






