こんにちは。たんぽぽキャットクリニックです。
今回は、保護猫医療の現場でよく聞かれる「FeLV(猫白血病ウイルス感染症)」についての疑問にお答えします。
目次
Q1. FeLVってどんな病気?
Q2. 偽陽性(弱陽性)って何ですか?
Q3. 偽陽性(弱陽性)はよくあるの?
Q4. 再検査は必要ですか?
Q5. 陰転することはありますか?
Q6. 陰転させる方法はありますか?
Q7. ステロイドを使っても大丈夫?
Q8. 保護猫で偽陽性(弱陽性)が出たらどうすれば?
Q9. FeLV陽性だと長生きできないの?
Q10. FeLV陽性猫は他の猫と一緒に暮らせますか?
Q1. FeLVってどんな病気?
FeLVは「猫白血病ウイルス」というレトロウイルスです。
免疫不全や貧血、リンパ腫などを引き起こす可能性があり、特に外にいた猫や保護猫でよく見つかります。
感染経路は主に唾液や血液で、毛づくろいやお皿の共有、咬傷でもうつります。
Q2. 偽陽性(弱陽性)って何ですか?
FeLVの検査は、血液を数滴とって調べる院内の簡易検査キットで行います。
結果がはっきり陽性や陰性ではなく「薄く出ている状態」を「偽陽性(弱陽性)」と呼びます。
これは感染が確定したわけではなく、グレーゾーンを意味します。
一時的にウイルス量が増えているだけかもしれない
免疫がウイルスを排除している途中かもしれない
逆に持続感染に移行する前触れの可能性もある
すぐに「陽性=感染確定」とは言えません。

Q3. 偽陽性(弱陽性)はよくあるの?
はい、あります。
免疫介在性疾患(例:免疫介在性溶血性貧血)などで一時的に陽性になり、その後陰性に戻ったケースも報告されています。
ですから「1回の偽陽性(弱陽性)」で結論を出すのは危険です。
Q4. 再検査は必要ですか?
必要です。
「偽陽性(弱陽性)」が出た場合は、まず院内でできる簡易検査キットで再度調べるのが一般的です。
保護直後は体調やストレスで一時的に偽陽性(弱陽性)が出ることもあるため、4〜8週間後に再検査するのがおすすめです。
それでも結果がはっきりしない場合や、確実に判断したいときにはPCR検査を行います。
PCRはウイルスの遺伝子を直接調べる方法で、最も正確に診断ができます。
Q5. 陰転することはありますか?
はい、あります。
特に子猫や若い猫では、初期感染の段階で免疫がウイルスを抑え込み、陰性に戻ることがあります。
実際に保護猫では「最初は偽陽性(弱陽性)だったけど、数週間後に陰性化した」という例も珍しくありません。
Q6. 陰転させる方法はありますか?
現時点で「確実に陰転させる治療法」はありません。
インターフェロン(IFN-ωなど)
免疫を助ける補助療法として用いられます。
5日間×3クール(Day0/14/60)の皮下投与プロトコルを用いた臨床試験では、臨床症状の改善や生存率の向上が報告されています(FeLV/FIV症状猫、二重盲検プラセボ対照)〔de Mari 2004〕。
また、シェルター猫を対象にした研究では、口内炎などの臨床状態の改善に加え、カリシウイルス・ヘルペスウイルス・コロナウイルスの排泄低下が示されています〔Gil 2013〕。
ただし、これらは予後改善・症状軽減のエビデンスであり、陰転(ウイルス消失)を目的とした治療ではありません。
📖 出典:
- de Mari K, Maynard L, Sanquer A, Lebreux B, Eun HM. Therapeutic effects of recombinant feline interferon-omega on FeLV-infected and FeLV/FIV-coinfected symptomatic cats. J Vet Intern Med. 2004;18(4):477–482. PMID: 15320583
-Gil S, Leal RO, Duarte A, et al. Relevance of feline interferon omega for clinical improvement and reduction of concurrent viral excretion in retrovirus infected cats from a rescue shelter. Vet Microbiol. 2013;162(2–4):633–643. PMCID: PMC7111785
RetroMAD1
FeLVの複製を抑える作用が報告されており、投薬を続けることでウイルスを抑え込み、状態を安定させることを目的に使われます。ただし研究段階であり、すべての猫に有効とは限りません。
つまり、「自然に免疫が勝って陰転するかどうか」が大きなポイントになります。
Q7. ステロイドを使っても大丈夫?
発熱や炎症でステロイドを使う場面はありますが、感染初期には注意が必要です。
ステロイドは免疫を抑えるため、せっかく排除できたはずのウイルスを持続感染へ進めてしまうリスクがあります。
どうしても必要な場合を除き、感染初期のステロイド使用は避けるのが無難です。
Q8. 保護猫で偽陽性(弱陽性)が出たらどうすれば?
- 完全室内飼育にして他の猫との接触を避ける
- 体調を整えてから4〜8週間後に再検査
- 里親募集は「再検査の結果を待ってから」にするのがおすすめ
Q9. FeLV陽性だと長生きできないの?
必ずしもそうではありません。
進行型(progressive):ウイルスが全身に広がり持続的に排出。免疫抑制や腫瘍などが起こりやすく、平均生存は2〜3年程度と報告されています。
退行型(regressive):免疫がウイルスの増殖を抑制し、血液からは検出されにくい状態。健康な猫と大きく変わらない寿命のこともあります。
中絶感染(abortive):ウイルスを完全排除。FeLV関連の病気は出ません。
つまり「FeLV陽性=すぐ命に関わる」ではなく、免疫応答次第で長く元気に暮らせるケースも多いのです。
Q10. FeLV陽性猫は他の猫と一緒に暮らせますか?
リスクはありますが、必ず感染するわけではありません。
うつる経路:唾液(グルーミング・食器共有・ケンカ)
対策:
- 陰性猫にはワクチン接種を検討
- 食器やトイレを分ける
- ケンカや過度な毛づくろいを避ける
「同居しても何年も感染しなかった」という例もあります。
ただし完全に安全とは言えないため、リスクを理解した上で同居管理することが大切です。
まとめ
FeLVの検査で「偽陽性(弱陽性)」が出ても、それは必ずしも感染確定を意味するわけではありません。
時間をおいて再検査を行うことで陰性に戻る子もいますし、たとえ陽性であっても長く元気に暮らしている猫もたくさんいます。
大切なのは慌てて結論を出さず、猫の体調を見ながら獣医師と一緒に判断していくことです。
正しく理解し、適切にケアしてあげれば、FeLVとともに安心して生活することは十分可能です。






