こんにちは。たんぽぽキャットクリニックです。
今回は猫のお口の病気の中でも特に治療に苦労する「尾側口内炎(FCGS)」についてご紹介します。

尾側口内炎とは?

尾側口内炎(Feline Chronic Gingivostomatitis:FCGS)は、猫特有の強い炎症性疾患です。
口の奥(咽頭部から舌の付け根あたり)にまで炎症が広がり、猫ちゃんは強い痛みでごはんを食べられなくなってしまいます。

原因はまだ完全には分かっていませんが、カリシウイルスやヘルペスウイルスの持続感染、免疫の異常反応などが関与していると考えられています。

左:健康な尾側粘膜、右:尾側粘膜の炎症あり

主な治療法

1.抜歯治療(標準治療)

尾側口内炎の治療の基本は抜歯です。
奥歯を中心に抜く部分抜歯(PME)や全顎抜歯(FME)が行われます。

研究報告によると、抜歯を受けた猫の50〜60%は有意な改善や治癒が見られるとされています。
部分抜歯と全顎抜歯のあいだで効果の差は大きくなく、どちらでも改善が期待できます。
一方で、FeLV(猫白血病ウイルス)陽性の猫では改善しにくいことが分かっています。

「歯を抜くのはかわいそう」と思われる方もいますが、実際には痛みを取り、ごはんをしっかり食べられるようにするための大切な治療です。

さらに、抜歯後は今までの口内炎の痛みがなくなることで、食欲が増して体重が増える猫ちゃんが多いです。
また「性格が穏やかになった」と感じる飼い主さんもいます。これは、長く続いた痛みによって攻撃的になっていたのが改善した結果と考えられます。

左:臼歯抜歯後に口内炎がほぼ治癒、右:難治性で臼歯を抜歯してもなかなか治らない尾側口内炎
2.投薬による治療

抜歯を行わずに、投薬で炎症をコントロールする方法もあります。

ステロイドや免疫抑制薬(プレドニゾロン、シクロスポリン)

 一時的に炎症や痛みを抑えられますが、長期使用には副作用のリスクがあります。

MUTIAN® / Mutral

 難治性口内炎の管理に使われる薬です。
 吸収病巣や残根(歯の根が残っている状態)がなければ、抜歯を行わずに口内炎をコントロールできるケースもあります。
 ただし「根本的に治す」というよりは、炎症を管理して生活の質を維持することを目的とした治療になります。

RetroMAD1

 抗ウイルス・抗炎症作用を持つ新規ペプチド製剤。
 国内外で報告例は増えていますが、まだ研究段階にあります。

モルヌピラビル(Molnupiravir)

 FIP(猫伝染性腹膜炎)の治療薬として注目されている抗ウイルス薬ですが、尾側口内炎に対しても効果があったという報告があります。
 ただし、まだ「治験レベル」であり一般的な治療法ではありません。

当院の方針

たんぽぽキャットクリニックでは、

短期的には投薬で痛みを和らげる

長期的には抜歯を中心とした治療で根本改善を目指す

という2本柱を基本にしています。

MUTIAN®やモルヌピラビルなどの新しい薬についても、最新の研究データを追いながら、症例に応じて飼い主さんと相談しつつ導入を検討しています。

まとめ

尾側口内炎は、猫にとってとても辛い病気です。
抜歯によって改善する猫は多く、投薬や新しい薬で管理できるケースも増えてきました。

「ごはんを食べにくそう」「よだれが増えた」「口を気にしている」
そんなサインが見られたら、早めにご相談ください。